埼玉県 鴻巣市

花と人形のまち鴻巣

公開日 2019年03月27日※当サイトでの公開日です

鴻巣市は、花と人形の多様な美しさと、それを育み守ってきた人の心のあたたかさを感じることができる街です。ひな祭り以外にも、5月の「こうのす花まつり」、勇壮な神輿渡御で知られる大にぎわいの夏まつり、秋には関東最大級の「こうのす花火大会」など、年間を通して見どころたっぷり。 また、鴻巣の地名の1つとも言われる「こうのとり伝説」を今に伝える鴻神社や、市内に流れる荒川の川幅が日本一に認定されたことにちなんで作られた麺の幅5センチを超える「川幅うどん」など、「幅広」が特徴の「こうのす川幅グルメ」も楽しめます。伝統産業と人々のふれあいを大切に育んできたまち鴻巣へ、ぜひ一度訪れてみてください。

江戸時代から人形のまちとして知られる埼玉県鴻巣市

埼玉県鴻巣市は、古くから「人形のまち」として知られています。江戸時代から約380年の歴史を重ねる「鴻巣雛(こうのすびな)」。すべて手作業でつくられるこの美しいひな人形は、埼玉県の伝統的手工芸品に指定されています。

鴻巣駅からほど近くに、人形店などが軒を並べ、伝統を現在に伝えてくれるエリアがあります。旧中山道が貫くこのエリアの町名はそのものズバリ「人形」。「鴻巣宿」の時代から人形づくりが盛んであったことを伝えてくれる地名です。ちなみに、「人形」という言葉が入る正式な地名は、日本全国にたった2つ。東京の「中央区日本橋人形町」と、こちらの「鴻巣市人形」だけです。

15年目を迎えた大イベント「鴻巣びっくりひな祭り」

人形づくりの伝統を現代に伝え、市外の方々にも広く知ってもらおうと企画されたのが、2005年の開始から15年を数える一大イベント「鴻巣びっくりひな祭り」。桃の節句である3月3日の前後に、2週間以上にもわたって開催されます。

メイン会場のほか複数のサテライト会場を合わせて、飾られるひな人形の数は、なんと約1万体にものぼります。このイベントの最大の特徴は、市民の皆さんが主体者となり企画・運営がされている点。「鴻巣の良さ」を自ら伝えようとする人達の、あたたかな思いによって成り立っています。

メイン会場の「エルミこうのす」には「日本一高いピラミッドひな壇」

「鴻巣びっくりひな祭り」の「びっくり」を象徴する目玉企画が、「日本一高いピラミッドひな壇」の展示です。これが見られるのは、メイン会場である鴻巣駅直結のショッピングモール「エルミこうのす」。吹き抜けスペースにドンと置かれた巨大なひな壇はなんと31段、高さは約7メートル。このひな壇だけで、1,833体ものひな人形が飾られています。こちらでお話を聞かせてくださったのは、鴻巣びっくりひな祭り実行委員会・副委員長の渡辺明美さん。こちらのお祭りは、企画・運営から人形の飾りつけなど、すべてボランティアの手によって行われています。さまざまな苦労を乗り越えて15年目を迎えたこのイベント。今では、東京都内など離れた地域から手を挙げてボランティアに加わってくれる方もいるそうです。

「花のまち」らしさあふれる、花とひな人形のすてきなコラボ

「鴻巣びっくりひな祭り」はメイン会場だけでなく、いくつものサテライト会場ごとに、それぞれ異なる工夫を凝らした飾り付けで、訪れる方に楽しんでいただくための工夫をしています。そのうち、花を中心とした農産物直売所である「パンジーハウス」で見られるのは「ひな人形 花飾り」。鴻巣市は、花の生産が盛んな「花のまち」としても知られています。なかでもパンジーの生産は、戦後間もない1948年に開始され、現在は市の名産品として知られており、花とひな人形を組み合わせた珍しい展示を見ることができます。花という自然の美しさと、人による手作りの美しさ。それぞれがそれぞれの美しさを引き立たせている様子は、まさに鴻巣ならではの光景です。鴻巣市産業観光館「ひなの里」ではさまざまなひな人形の展示や特産品の販売が通年で行われていますが、ひな祭り期間中は「つるし雛」や「大雛」などこの時期にしか見られない展示が多く行われます。

鴻巣の人形づくりの歴史を伝える老舗「マル武人形」

人形二丁目にある「マル武人形」は、地元でもよく知られる老舗人形店。創業70年を超えるこちらでは、人形の制作から小売・卸しまでを広く手がけています。製造部長の馬場政信さんがお話を聞かせてくれました。鴻巣市は、かつて中山道の宿場「鴻巣宿」の宿場町として栄えたことを興りとしている街です。この地に人形づくりが根付いた理由には諸説がありますが、江戸前期に藤原吉国という仏師によって技術が伝えられたともいわれています。この付近は京都と江戸や日光を結ぶ上での要衝であることから江戸期になって栄え、人や技術の交流が盛んになったという歴史があります。

人形師さんの手作業で丁寧につくられる鴻巣のひな人形

「マル武人形」の上層には広々とした作業場があり、人形師の皆さんが人形づくりに打ち込んでいます。女性ばかりの職場は、ちょっと手を止めて息をつくときには賑やかに冗談も飛び交う明るい雰囲気。でもひとたび作業に戻れば、皆さん凛とした集中力で、繊細な作業に没頭していきます。「奥の深い人形づくりにおいては、まだまだ学ぶことの多い日々」とお話を聞かせてくれたのは、約12年の人形づくりの経験を持つ小野島久美さん。高度な技術・技法を有する技術者として「埼玉県伝統工芸士」への認定も間近な腕利きの人形師です。
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